
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
「私は貴女が、またとない現実。…──」
遠い昔、彼女を呼んだ名前を口にした。
「貴女を待たせるつもりはない。寝屋川達にはバレて、佐伯ゆづるはあと少しのところで立ち直ったし、なずなちゃんは使えない。でも奇跡は限られている。きっと、今度こそスピリットジュエリーを手に入れて、私達の故郷の糧に出来る」
まるで自分に言い聞かせる口振りだ。だが少女の方は、椿紗の違和感を指摘しなかった。気付かなかったらしい。
魔法少女の対価の出どころを、椿紗が知らなかったはずがない。彼女らに給与を出しているのは、椿紗だ。
なずなやなつるは、無知を騙った雇用主に、純粋な同情を寄せてきた。特に、なつるとは付き合いも長い。彼女に後ろ暗さを覚えたことがなかったわけではないにしても、やはり椿紗には、少女を蔑ろにしてまで守るものがない。
