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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子


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 四月から今にかけての数ヶ月が幻ででもあったように穏やかな午後、ゆいかは明珠と、溜まった書類を吟味していた。
 椿紗が責任者を務める事務所は、なずなやなつるら馴染みの顔触れに加えて、新たなアルバイトも出勤していた。一時の人手不足はしのぎきったが、人智を超えた現象など軽視されがちな現代社会で、依頼の数だけは尽きない。暴力事件の多発だの、引きこもりの子供が親に手を上げるようになっただの、一見、魔法少女の管轄らしからぬ案件でも、蓋を開ければルシナメローゼが関係していた例は少なくない。普段は非科学を笑い飛ばすような人間も、窮地に至れば、それに縋る他になくなるのかも知れない。


「明珠、これは?バスで二停留所で行けるよ。コンビニのクレーマーは、怨嗟も軽いことが多くて楽」

「待って、もう少し考えよう。クレーマーの方にゆいかが怒鳴られたりしたら大変」

「じゃあ、こっち。不良の喧嘩。基本、こういうのは当事者だけでやってるから、巻き込まれない」

「怨嗟が癖強いの多いでしょ。危ないよ」

「あ、これ、良くない?介護施設の横領疑惑。証拠が消えるだけだって。おとなしい怨嗟かも」

「それ人為的っぽい……。ゆいか顔見られて捜査がバレたら、消されそう」

「明珠の発想の方が怖いよ!」

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