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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子








 手頃な案件を片付けて、明珠となずなと解散した数時間後、ゆいかの私室に、父親が来客を知らせに来た。

 派手で可愛い女の子。

 彼の言葉でピンときた。


 扉を開けて、血の気が引いた。腫れた頬、内出血した手脚──…なずなの重傷に父親が目を留めなかったのは、ゆいかとてガーリーファッションを好んでいるとは言え、彼女ほど煌びやかな第一印象を振り撒く少女が、それだけ珍しかったからだろう。Angelic Prettyから今季の新作として出たばかりのジャンパースカートは、ウサギやクマなどの形の瓶やジェリービーンズが散らばっている柄で、揃いのブラウスもレースが同柄に仕上がっている。そのあまりにもディテールの詰まったレースのあしらわれた襟が、裂けていた。


「ゆいか、さ──…ぅ"っ……」


 赤い頬とは真逆の色の口を抑えて、なずなが壁に手についた。

 彼女を部屋に上げて、今しがたまでLINEしていた明珠にしばらく返信が遅れることを告げて、ゆいかは近くのコンビニエンスストアに走った。薬局へ行くつもりで家を出るほど、動転していた。手ぶらで引き返すのも気が引けて、パンナコッタと紅茶を買ってから戻ると、今度こそ彼女に回復魔法を施した。


「少しは傷、残しておいて。すぐるくんにおかしく思われちゃうから……」

「なずなちゃんが防がなかったからでしょ。何で?」


 崩壊した街の壁や道路の修復が可能であれば、ブラウスの襟も直せるはずだ。同じ容量で右手を当てると、そこに集めた魔力が引いた。

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