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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



「すぐるくんのプライドに傷が付きます。彼の収入だけじゃ足りないのかって……」

「でもなずなちゃんは、お金より、そのお仕事が楽しくてやっているんでしょ?何のお仕事?コンカフェ?」

「いえっ、えっと、テレアポです」

「そっちかぁ、可愛い声だもんね。どう?お父さん。男性側の立場なら」

「なずなちゃんは、考えすぎじゃないかなぁ。おじさんなら、好きな人が楽しく仕事をしていたら、幸せな気持ちになるぞ」


 笑い合う年長の夫婦を見るなずなの顔は、異星人にでも出くわした風だ。僅かな羨望がちらついて、ゆいかと明珠も、いつかなずなのこうした視線を受けていた。



 交代で入浴を済ませると、深夜零時が迫っていた。
 明日は平日だ。学校の教科書は友人に頼めばどうにかなるというなずなに、ゆいかは洋服を選ばせる。



「お気遣い不要ですっ。同じの着ていくからっ……」

「いいよ。下着も使ってない新品あったはず、ちょっと待ってて」



 クローゼットから何着かの洋服を出して、あれこれなずなに提案するゆいかの脳裏に、彼女との今日までが色とりどりに散らばるポートレートよろしく蘇る。

 ゆいかが絶望の淵に落ちていた頃、泣き腫らしたなずなを化粧して、生きた心地を取り戻した。彼女とは買い物にも出かけたし、すぐるの元から連れ出して、会社に泊まり込んだこともあった。明日はうっかり寝過ごせないのに、夜が更けるのが惜しい、睡眠時間など削って、彼女との時間を楽しみたいという欲求が、膨らんでいく。

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