
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
「あたしならもっと大事にするのに」
「え……」
リボンブローチを飾った丸襟、提灯袖という典型的な少女趣味が詰まった厚手のシフォンの身頃から、花柄のラッセルレースのスカートに切り替わったワンピースをなずなに当てるゆいかを、揺れる大きな瞳が映していた。
他人を猜疑したことのない目だ。容姿が中身を現すなどと科学的な根拠はないが、彼女の顔は、柔和でひどく気が弱く、そのくせどれだけ雨に打たれても朗らかに咲き続ける、花にも似た気性を現している。他者を決して傷付けず、恨むくらいなら一人で苦しむ。その優しさに付け上がったり、甘えかかったりするべきではない。
「なずなちゃんは、八神くんにはもったい」
「ゆいかさ──…んっ、……」
スツールにワンピースを投げ置いて、ゆいかはなずなの腰を寄せた。湯気を吸ってきたばかりの頬は、化粧による血色が落ちた代わりにいつになく指に吸いつくようで、その質感を確かめるように撫でて顎先を持つと、ひくん、と彼女の肩が顫えた。いつでも唇を塞げるような距離まで詰めても、大きな目は戸惑うだけだ。
「こんなに言ってもあの男を否定しないなら、なずなちゃんにあたし、本気になるよ?」
「冗、談……」
