
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
「そうだね。恋愛感情なら冗談かも知れない。でも、明珠には、なずなちゃんを助けるためなら多少の近付きすぎは気にしないって確認済み」
「近付きすぎ……って?」
「こういうこと」
…──ちゅ。
憧れて、やっとの思いで迎えた人形を手に入れでもした心地でキスしたなずなの唇は、幻のように儚げで、胸が詰まるほど温かかった。
そう、人形だ。そして幻。
そうでも自己暗示をかけておかなければ、ゆいかは罪悪感に飲まれる。
どこまでがなずなの許容範囲か。どこまで同情と呼べる行為か。
「んっ、はぁ、んんっ……」
胸中を張りついていた繭が、ほどけていく。まるで触れた気がしない、儚く無味の唇を、ゆいかは角度を変えて味わう。無防備に身体の線を主張した寝巻きに這わしかけた右手を引いて、彼女の左手を持ち上げた。
「嫌がらないんだ。少しくらい怒られるかと思った」
くちゅ。ちゅぱ…………ちゅ……
「んっ、ぁ、何で私なんか……」
逆に問い返してきたなずなの言葉は、ゆいかの疑問を流したようで、これ以上にない回答だった。親や恋人を除く他人がどれだけ彼女を肯定しても、魔法少女でどれだけの人を助けても、彼女の自己評価は変わらない。肯定より否定だけを鵜呑みにしながら、それでも、彼女の胸の奥底は、どこかで救いを求めている。気付かれたくて気付かれたくない。彼女との時を重ねる度に募っていく、ゆいかの胸奥を巣喰う感情と同じだ。
