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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



 魔法少女の事務所へは寄らず、退社後、ホテルで夕飯をとった。最近まで食事を終えれば駅で解散していたのに、そのままチェックインすることが増えたのは、あの日以来、ゆいか達の関係が変わったからだ。


「ゆーいか」


 官能的な女の身体の芳香に、くらくらする。

 遠くに感じるベルガモットとさっぱりとした口当たり、入浴後には絶好のティーサワーからの酩酊が、ゆいかの意識を浮遊させているのではないはずだ。

 終わったよ、と耳朶に触れたメゾの声が、総身に不可視の触手を這わせていく。身を寄せて、甘えた調子でゆいかの腰に腕を回した明珠の胸が、バスローブの厚みをものともしないで、腕を沈めた。


 頭を悩ませていることが、取るに足りないものに思えてくる。消極的な後ろ暗さから、魔法少女も明珠も手放そうとして、結局どちらも握り締めてしまった時点で、今更、何を憂いでも意味がない。同じ状況にありながら、幸福を確信して疑わない彼女の目がゆいかを見つめて、装飾品のような身体がゆいかとの距離を失くしている。


「何もしなくても綺麗なのに、相変わらず手、抜かないね」


 まだ水気の残った黒髪に指をうずめて、余分な肉付きの一切ない、それでいてもっちりとした首筋や頬を撫でると、その手が彼女に捕まった。爪の先に、戯れるようなキスが落ちる。

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