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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



「何もしなくても綺麗なものは、ないよ」

「そう、かな……」

「ゆいかが幸せに見えるのと同じ。悩んで頑張って、大変だった部分は隠れても、そこでゆいかが積み上げたものがあるから、傍目からキラキラ綺麗に見えるんだよ」

「そこに結びつけたかー……」


 確かに、行動があって結果はある。

 栗林達がなずなを羨むのも、外では彼女が、誰にも心配かけまいと努めてきたからだ。明珠とて元から今のスタンスだったのではない。

 そう考えると、ゆいかも、一連の不運は思い込みだったのかも知れない。珍しくもなかったのかも知れない。


「考えるのやめる」

「悩んでたの?幸せに見られるの、そんなに苦手?」

「嘘ついてるみたいな気分になる。こまめに寿命の計算して、なつるさんに占ってもらって、明珠のことも危険に晒して、それで悩めないほど強かじゃないし」

「魔法少女っていう重労働もあるからねー」

「ね?命の危険と隣り合わせなんて、いつの時代だよって思うでしょ」


 それでも明珠の理屈を持ち出せば、魔法少女は薬と同じだ。
 花粉アレルギーで悩んでいる人間が、そのための薬を飲むのと同じことだ。春先に平然と生活する彼らは、薬なしでは鼻水やくしゃみに悩まされる。ゆいか達は、通年それが、魔法少女の副業だというだけだ。


「やっぱり泊まりって良いなー。お酒飲んでも帰らなくて済む」

「そこ?」

「うとうとしてる時にすぐ横になれると、気持ちいいもん」

「何となく分かるけどね」

「そっか、明珠、酔わないもんね」

「これくらいだと紅茶って言われても信じるかな」


 明珠が、ゆいかの飲み残しを口に含んで喉を鳴らした。

 その唇に自身のそれを押しつけて、舌を入れる。

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