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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



「ん……」


 昼間の凛とした言葉つきからは想像出来ない。ティーサワーを遥かにしのぐ、甘ったるい溜め息をこぼしてキスに応える彼女の口内は、ゆいかと同じ味がするのに、たとしえない中毒性がある。


「あ……あァ……、んっ」

「ゆいか……可愛い……」


 てろてろと唾液を塗り合いながら、柔らかな彼女の唇や、しどけなく動く舌のざらつきを、貪るように、ゆいかは自身に染みつけていく。

 貴女以外の何もいらなくなる。

 ありきたりな戯言に、ゆいかは笑う。夜闇の降りた無音の空間、まるで世界から切り取られてきたような今なら、深刻に解釈する方が無粋だ。

 明珠、明珠……と囁きながら、彼女の喉にキスを移して、あでやかに鳴く声帯を外側から啄みながら、彼女の乳房の膨らみに触れる。



 あの八月の日以来、何度、ゆいかは明珠を抱いただろう。同じように、彼女に身体を見せたことか。

 添い遂げたい相手だから。将来は一緒にいるのだから、病める時も健やかなる時も、死が二人を別つまで、文字通り運命を共に出来るなんて幸運だ。

 そうした言葉を並べ立てて、明珠がゆいかを求めてきたのは、あのバイク同士の諍いのあとだ。それだけゆいかが憔悴していたのだと思う。

 感覚を伴わない愛情だけでは救われなかった。自分の代わりは他にいる、と、考えないではいられなかった。
 羞恥と不安と愛おしさ、ひしめく感情の狭間で施されていった快楽が、ゆいかの理屈や理性を溶かした。いつになく強引な口づけに、独占欲を気取った指──…優しさなど求めなかったゆいかの心中を察した具体の呼び水が、躊躇いがちに蜜を吐き出す蕾に至ったところで、一変して利他的になった。

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