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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



 ゆいかとの逢引を、すぐるはなずなに隠している。歳上の女からのアプローチは、満更でもないということか。生真面目な男らしからぬよそ見を初めて経験して、彼なりに後ろ暗さがあるらしい。

 なずなの行動の自由は増えた。昨年末に続いて年が明けても、連日ルシナメローゼに出勤しては、時間を気にせず案件をこなして、なつるが食事に誘えば頷く。それは人づてに聞かされることで、ゆいか自身は、魔法少女の仕事以上に、すぐるを連れ出すことに空き時間を費やしている。



 新春の雰囲気も薄れた頃、つと、すぐるが港に散らばるクルーズ客船に目を遣ったまま呟いた。

「あいつの教師が、お前の付き合っていた女なんだろう?」

「あ……」

「会社経営しながら、非常勤でもやってるのか」


 心臓に氷水を被った心地がした。

 なずなに初めて逢った夜も、それから何度か彼女が彼から逃げてきた時も、明珠が教師を騙って彼女を家まで送り届けた。その際の苗字と、度々参席するパーティーで、重鎮達が話題に出したがる女のそれとが同一となれば、彼がピンときても仕方ない。


「確か、そう。……ねぇ、つらくなるから、ごめん。彼女の話題は出さないで。今はすぐるくんが好きなんだよ」


 ここまで沈痛な面持ちを装えば、口ごもっても不信感は与えまい。
 明珠とは破局したことになっている。ゆいかはなずなからすぐるを奪って、彼を愛さなければいけない。愛していると、四六時中、自己暗示にかかっていなければいけない。

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