
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
すぐるのなずなへの干渉が薄れ出したのは、年末だ。
帰りが遅くなった時の詰問は減って、彼のアルバイトが休みの日でさえ、なずなが教授の急な呼び出しに応じても、彼はすんなり納得した。暴力も減った。束縛も緩和した。
友穂らはすぐるが心を入れ替えたのではないかと仮定していたが、なずなが隠れて魔法少女をしている以上に、彼の空白の時間は増えた。アルバイトの時間を増やしたらしいが、収入と合わない。
「最低……」
「美波。あの人に限ってそれはないよ」
「ガリ勉で優等生だから?関係ないよ。浮気するヤツはするよ」
「浮気っ?!」
なずなは、咄嗟に美波の手許を見た。彼女から小説の世界でしかあり得ないような言葉が出たのに、本はなかった。
いや、過ちは実在する。なずなとて不義を犯した。だとすれば自分だけが悩むのも、筋が違う。
すぐるは聡明で、勘も良い。
なずなの過ちを知ったすぐるは、呆れて怒りも湧かないのではないか。
「あの、だとしてもすぐるくんを責めたくない……」
「なずな、それはお人好しだよ」
「そんなだから八神さんだって調子に乗るんだよ。もどかしい!私がなずなの男になりたいっ!」
「こーら、友穂。それだと貴女が浮気になるでしょ」
微塵もなずなの否を疑わず、親身な軽口さえ叩く友人達。
余計に後ろ暗さが膨らむ。自分には、信頼や優しさを受けるような資格はない。生まれ落ちてから今日まで、なずなは世界の不純物以外になれた試しがない。それでも、すぐるに捨てられたくない。
