
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
「自業自得なんですけどね……」
椿紗と二人きりになる機会があって、ついすぐるとの憂慮を彼女にこぼしたのは、その週のことだ。年長者の女の意見が欲しかったのか、ただ慰められたかったのか。
エキゾチックな目鼻立ち、細く凛とした目許の奥に煌めく静謐な黒は、なずなを安心させるだけの包容力を垣間見せている。親身で秘密主義な占術師が客の話に頷くように、彼女もなずなが話し終えるまで相槌だけで耳を傾けていてくれた末、唇を開けた。
「かたちあるものはいつか壊れる。はっきり言って、ピンクちゃんなら他に良い人は見つかるわ」
「え……」
「彼がDV男でしょう?そうじゃなければそういう魔法を教えることも出来るけれど、彼がなずなちゃんだけを見る暗示をかけたところで、効果が薄れれば元に戻る」
「それは、はい……魔法を使ってまで、すぐるくんに愛されていたいわけじゃないですけど……。てか、そんなこと出来るんですね」
明らかな落胆を見せたなずなに向いた椿紗の目は、同情的だ。それは魔法少女の事実が明白になった時、かつてここにいた従業員らの身内に不幸があった時に似ている。目前の悲運を彼女自身のこと同様に傍観しながら、ただ共に悲しむことしか出来ないのだと代弁している悲しい目。
