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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



 昔話をして構わないか。そう前置きした椿紗の経験した十代は、なずなの想像を絶するものだった。

 自分も大切なものを失くしている。失くしたのは親友で、彼女との日々を延命出来るほどの魔法は持ち合わせなかったが、一人になっても生きている。むしろ彼女が隣にいた時にも優って、自分は強くなっただろう。

 初めて聞いた雇用主の来し方は、おおむねそうした内容だった。


「その親友さんは……」

「亡くなった」

「あ……」

「ルシナメローゼとは関係ないわ。通り魔よ」


「──……」


 どちらにせよ、口にするのも避けたかった過去だろう。
 かけがえないと口にすることは容易い。だが想うだけでは繋ぎ止めておける保証もなければ、失くしたところで生きていけなくなるとは限らない。事実、椿紗は少女の内に逝ってしまった親友の手ほどきによって、魔力を得た。彼女の不可視の形見を使って、ルシナメローゼという事務所を建てた。


「私の背負えた喪失だから、ピンクちゃんにだって背負るとは断言しない。悲しんでいる人間に、皆悲しいのよ、なんて酷じゃない」

「…………」

「それでも、貴女には魔法少女がある。それに対価の影響が、八神すぐるくんに現れない。それはピンクちゃんの魔力が、もしかすれば私なんかの及ばないほどのものだからという可能性もあるわ」

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