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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



 他人に自身を委ねたり、自身の価値を下げたりしなくても、なずなには誇れるものがある。

 暗にそうしたことが言いたかったのだろう椿紗のような思考が持てれば、彼女くらい強ければ、なずなは今ここにいさえしなかったかも知れない。


 同世代の少女達は、ともすれば洋服を着替えるほど気軽に、昨日愛を囁き合ったばかりの相手を忘れて、あくる日は別の相手を恋人と呼ぶ。
 なずなにも選択肢があるはずだ。だのに選択しないのは、何故か。何故、すぐるのいない道を選べないのか。


 なずなのいわゆる浮気の相手は、ゆいかだけではない。よそでセックスする以外の行為も不義と呼ぶなら、なつるとの関係も相当だ。アルバイトが遅くなると彼女に車で送ってもらって、彼女の食事の誘いを受けたり、歯の浮くような口説き文句に、拒絶とは違う思いで応じたりする。


 椿紗との長話のあと、馴染みのアルバイト達が顔を出してきた。彼女らの中にはゆづるもいた。彼は書類棚のコピーを軽く吟味するとすぐに仕事に向かったが、なずなはなつると、歓談しながら今日の依頼を検討した。
 なつるは、なずなを決して否定しない。年齢はもちろん、魔法少女としての経験値も彼女からすればずっと浅いなずなに対して、敬うような態度さえとる。それはゆいかにも言えることだが、このところ、なずなはなつるの方が信頼出来る。そもそもすぐるとの間に生じた溝も、ゆいかの不可解な行動のせいだ。

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