
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
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アーケードゲームをプレイしていた自称プロゲーマーが、観衆の一人に逆上した。面白半分の野次が発端だった大の男達の口論は、瞬く間に殴り合いに発展した。
駆けつけた警官達が彼らを止めて連行したが、今度はガシャポンの並んだ壁の裏側から、複数のがなり声が轟いたという。当初の標的を逃した黒い怨嗟が、憑依の対象を変えたからだった。
なつるの鎖が小気味良い音を連れて、セーラー襟の制服姿の少女達の胴体に巻きついた。厚手の制服がはぐらかしていた女子高生らの身体は発育が良く、魔法少女の挑発的な衣装をまとったなつるが鎖を握った右手を引くと、あどけなくも艶かしい、乳房からウエストにかけての線が露出した。苦痛より驚愕の気色が上回る少女達の四つの目が、ギラギラとなつるをねめつけている。
「なずなちゃん!」
逆さにしたパラソルの形状を描くピンク色のスカートの裾を抱えて、なずなはその場を跳んで離れた。すかさず、たった今までなずなのいた地点に少女達を離れた黒い塊が滑り込んできて、闇を広げた。
「お星様お月様、お願いっ」
ガラス張りの壁から望める遥か遠くへ、なずなは魔力を集中させる。
夜の帷の下りた世界は、空と街とが合わせ鏡だ。無限の天幕は月と星が、地上はネオンや街灯が、光を散りばめている。
なずなが操れるのは、前者だ。砂場から粒子を寄せ集める塩梅で、窓越しに光を集めると、まるで銀色の煙幕になったそれらを怨嗟めがけて反射させた。
