
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
店内が大惨事になることは目に見えていた。
しかしここにいる魔法少女は、星の力を借りるなずなと、主な戦法は鎖の操作と未来予知のなつるだけだ。
短期収束と人命を優先した結果、今、店内は猛獣が荒らしていったあとのようだ。
なつるの魔法が奏功して、この状態を不審がる第三者もいなければ、一部終始の怪現象が彼らの記憶に深く残った様子もない。
ただし、彼女が例の魔法を使った傍らで、なずなの呼んだ無数の石の浮遊物が、怨嗟ばかりか手当たり次第に周囲のものにちょっかいを出すのは不可避だった。地盤から床を突き抜けて上がってきた石達は、本来の標的である四つの怨嗟をスピリットジュエリーもどきに戻した上で、思い思いに暴れたあと、なずなの魔力を手放した。
特に青ざめているのは、年長の店員だ。彼女は、同じくらいの貫禄を背負ったもう一人の店員と話していた。
年長の方の店員が、本社と警察、それから状況次第では救急車を呼ぶことを検討している。それなら、と、彼女の相談相手をしていた店員の方が電話を持ってくると言い置いて、その場を離れた。電話のあるところへ足を向けたはずの店員の進行方向は、変身を解いたなずな達のいるガシャポンコーナーだ。
「ルシナメローゼの方ですよね?この度は有り難うございました、お陰で今日から安心です」
今回の依頼者だったのだ、とすぐに分かった。蒼白な顔色は装っていただけらしい。
古代帝国の住人達の怨嗟を認識することもなければ魔法少女達の戦いを目で確かめることもないにせよ、世の中には一定数、科学では証明出来ない事象に関心を寄せる人間がいる。彼女達は好奇心からあらゆる情報、噂を集めて、それらが身近に生じた不具合と一致した時、藁にも縋る思いで、椿紗の事務所に助けを求めるような行動に出るのだ。
