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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子


* * * * * *

「お父さんが会社で健康診断受けてきたんだ。骨年齢が、実年齢より十も若いって。お父さんは自慢してたけど、そういうのって、八神くんも嬉しい?」

「俺はまだ二十二だからね」

「見るからに健康そうだしね。生死を彷徨ったこともあるあたしからしたら、八神くんみたいに元気なのは、それだけで憧れる」


 すぐるが電車の席を立った。その顔には、くだらなさそうに相手を揶揄する時の気色がちらと覗いていた。


「ホテルでゆっくりしたいかも」

「は?」

「夕飯、食べすぎちゃった。お酒飲んだら吐きそう」


 すぐるの指に自身のそれをじゃれつかせても、ゆいかは上目遣いまでしない。
 身近で聞く恋愛話やネットから得る情報など、すぐるを相手に応用出来ない。彼は世間の男達が刺戟を得るという女の仕草や言動に、感動しない。彼が共にいたがるのは、彼を肯定して持ち上げる、彼の方が立場が上だと明確に実感させることの出来る女だけだ。本当に弱く浅はかかは問題ではない。重要なのは、どれだけ彼の自尊心を満たせるかだ。


 今夜は、紹介制のバーに場所を移す予定をしていた。
 その予定通りに行動すれば、店主と顔見知りのゆいかは、また明珠とは別の人間と睦まやかにしていという理由から、好奇のひやかしに遭っていただろう。

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