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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子


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 見覚えのあるゲームセンターに立ち入ると、通行止めのテープを囲って、人だかりが出来ていた。コーンの内側では責任者らしい女達が警官らの事情聴取を受けていて、しかつめらしいスーツ姿の複数名も立ち会っていた。

 魔法少女は、変身すれば、第三者の認識を外れる。その間に使った力は風や地響きなどの自然現象として現実世界に影響して、人智を超えた一部始終は、事実として残らない。

 ゆいかが到着した時、既に怨嗟は石に還っていた。なずな達の近くでは、不運に見舞われたばかりと思われる会社員ら二人が、青い顔を現場に向けている。

 白とサーモンピンクが多くを占める、あちこちに花があしらわれた魔法少女に身を変えて、ゆいかは辺り一帯に、ポプリを撒いた。閉館間際の百貨店で買い占めてきた、植物を原料としたフレグランスは、とりどりの香りで現場を包んだ。
 花園を想起する濃密な香りに魔力を込める。すると、逆再生した動画の速度を上げたような光景が始まった。粉砕していた設備や壁が、あるべき形状に戻っていく。離れた部品は互いに呼び合い、罅も消えていく。つと、香りが触れる距離にいた観衆の一人が、ゆいかの視界に飛び込んだ。この時期特有の手指の荒れに悩まされていたらしい女が、急に赤みの消えた片手を目線に上げて首を傾げた。

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