
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
Emily Temple Cuteのバンビ柄のコートを合わせた普段着に戻ったゆいかは、さっきまでにも増して、不可思議な現象が人々を困惑に至らしめているのを目の当たりにした。
いっそのことただの人災と片付けられて、後処理は業者の仕事になった方が、まるく収まっていたかも知れない。そうしたことをぼんやり考えていると、目の合った一人の従業員が、ゆいかに走り寄ってきた。
「有り難うございます。あ、私、先日東雲さんに依頼で電話させていただいた、持田です」
持田と名乗った女の話したところによると、ここ数日、客同士の小さなトラブルに頭を抱えていたらしい。それが解決しただけでも助かったのに、後処理まで、会社の経費が痛手を負わなくて済んだと言って、彼女は深々と頭を下げた。
「お客さん達、パニクってるのはどうしようも出来ませんが……」
「大丈夫です。怪我人もいませんし、世の中、不思議なことの一つや二つ、あってもおかしくありません」
なるほど、種も仕掛けもない超現象の究明にいつまでも時間を割けるほど、警察も客も暇ではない。案の定、匙を投げた彼らは退散、何事も起きなかったかのような現場跡には、ルシナメローゼの顔触れだけが残った。
ゆいかがなつると話したのも、数分だ。スマートフォンに何か連絡を受けた彼女は急に朗らかな表情を消して、蒼白な顔で店を出た。時刻は九時前。すぐるは、あの近くで勉強している友人の顔を見に行くと言っていた。先にスピリットジュエリーを椿紗に届けて、それからなずなを送っても、問題あるまい。
