
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
「すぐるくんしかいないのに……私にはあの人しか。釣り合わなくて、身のほど知らずでも、好きなのに。ゆいかさんには一色さんがいるのに、何で……すぐるくんなのぉ……?」
ゆいかと目を合わせようとしないなずなは、誰かに激しい感情をぶつけたこともないのだろう。
悲しみに飲まれていく彼女を見つめながら、ゆいかは、また安堵していた。
すぐるを愛情の対象にすれば、なずなが解放されると思った。それだけではない、彼といる時、とりとめない無駄話を装って健康診断の話題を挙げたのも、体調を探りたかったからだ。
彼の求めるものを与えて、彼を持ち上げてやる女。そうした偶像を演じながら、かたちだけでも恋人候補を気取ることで、魔法少女としてゆいかが得る例の対価の出どころがすぐるに移れば、目論見通りだ。明珠から奪うものもなくなる。
なずなとすぐるの間には、寿命の移動が見られなかった。もしゆいかがすぐるから時間を得られれば、もとよりなずなが彼を愛していなかった確信にも繋がる。
まだ何も分かっていない。何も守れず、ゆいかは何も得られなかった。
もとよりとっくに肉体関係のあるなずながすぐるの時間を吸い上げられないのだから、ゆいかが今夜、彼をセックスの相手にしていたところで、徒労に終わっていた可能性もある。
