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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子



「ゆいかさんのこと、信じてたのに。優しくて親切で一緒にいて楽しいって、私──…っ?!!」


 珍しいほど語調を強めたなずなの声が、そこで途切れた。
 耳元に触れる彼女の呼吸が、あらゆる感情をしのぐような驚きを訴えたがっている。ゆいかをどこか避けながら、警戒して、失望して、ついに敵愾心まで垣間見せた。
 そのなずなが今、恋仇と解釈した女に抱かれて戸惑っている。ゆいかを突き放そうともしないで。


「なずなちゃんが好きだから」

「え……」


 なずなの背に回した片手をくすぐっていたツインテールの毛先をもてあそびながら、ゆいかは彼女を捕まえた腕の力を強める。


 こうも愛らしく健気な少女をおびやかしてばかりの男を殺す想像なら、いくらでも出来る。想像だけなら容易いのに、実際は、なずなの世界にあの男はこびりついている。

 初めからこうすれば良かったのかも知れない。標的から寿命は吸い上げられない。最愛の人に秘匿して、なずなを悲しませただけだった。


「八神くんの話をしてるなずなちゃん、楽しそうに見えないよ。髪やお洋服を汚したり、あんな上から目線だったりする人、それってなずなちゃんより優位に立って、気持ち良くなっていたいだけだよ」

「…………」

「彼を信じるくらいなら、あたしを信じて」

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