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副業は魔法少女ッ!

第5章 きららかな表皮にくるまれた残酷



 並行した二つの記憶は、どちらも今朝、ゆいかが体験したものだ。

 一方は、ルシナメローゼの怨嗟の呪いで生死を行き来した記憶。現実世界の辻褄では、電車の急停車で心臓麻痺を起こしていた。集中治療室に搬送されたらしいが、ゆいかはほとんど覚えていない。その事実が消えたあと、明珠の残していたネットニュースのスクリーンショットを見て知った。

 もう一方は、最終的に至った今だ。なつるが固有魔法で怨嗟の発生源を探り当てて、明珠に連絡した結果、事なきを得た。ゆいかの乗車していた電車を見付けた彼女が、外部から怨嗟を引きずり出した。その時は、既にゆいかは身体の一部を食い千切られて、黒い感情に飲まれていた。体験したこともなかったような、悲しみ、怒り、やるせなさ、諦念。…………

 それまでの生への執着が、無意味な愚昧に感じていた。どれだけの血液を流せば死ねるか。それを考えると僅かに救われる気がした時、やはり意識は途絶えた。


 朝礼の時間の過ぎた社内は、静かだ。明珠の秘書は、彼女に仕事を言いつけられて、今は別の部屋にいる。

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