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副業は魔法少女ッ!

第5章 きららかな表皮にくるまれた残酷



 ゆいかは、ネットニュースのスクリーンショットを削除した。
 ルシナメローゼの怨嗟に噛まれて、正気でいられなかったのは当然だ。破損した身体の一部は、呪いから解放された瞬間、無意識の内に治癒魔法を施していて、今は無傷だ。スクリーンショットを消したのは、明珠の精神面を考慮してだ。彼女の方が、怨嗟の影響を受けたような顔色だ。


「心配かけて、ごめん。あと遅刻してごめんなさい」

「遅刻はいい。私も遅刻だし」

「…………」


 怨嗟は、石に戻った。明珠の魔法は電車の遅延もなかった結果を呼び寄せて、ゆいかも無事だ。

 これ以上社長室にとどまっても礼を伝えることしか出来ないからと、昼休みにまた来る、と言い残して、今度こそゆいかは扉に向かった。

 扉に向かったつもりが、片手の自由が奪われている。


「…………。手、離して」

「もう少しここにいて。田中さんには私から説明するから」

「…………」


 明珠の目には、もしやゆいかしか映っていないのではないか。

 
 そう勘違いしても仕方ない、彼女の切実な目に捕らわれて、魔法少女になって良かったと、数ヶ月振りに身に染みた。

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