
副業は魔法少女ッ!
第5章 きららかな表皮にくるまれた残酷
「魔法少女がルシナメローゼの怨嗟を封じれば、確かに、多くの人達が助かります。だけど東雲さんの本当の目的は、怨嗟達のスピリットジュエリーもどきと、私達のスピリットジュエリー。だから魔法少女の報酬の出どころをあえて親しい人間に設定して、私達から生きる希望を削ぐ理由を作る。魔法少女は、死ねばスピリットジュエリーを遺すから。貴女にとって、ゆづるくんの自殺は計算内だった。ひよりちゃんが寿命を吸い尽くされて、彼があとを追うのを狙っていた。違いますか?!」
その時、扉が開いた。入ってきたのは、健康を絵に描いたような大学生だ。肩より長いストレートの茶髪の天辺は、この季節らしくニット帽に覆われている。
「栗林さん……」
「おはよう」
「ちょうど良かった、貴女も話を──…」
「瓜生先輩の話されたことは、事実です。皆さん」
なつる以上に確信を持ったような栗林の声が、彼女の言葉を遮った。物事を深く考えない、良い意味で楽観的な彼女の調子は昨日までとまるきり変わらず、ただ、その声音や目つきは真剣で、面白がって彼女に話を合わせている風ではない。
栗林は後ろ手に扉を閉めると、コの字型に配置された長テーブルに進み寄ってきた。それから再度、口を開いた。
「だって、私もルシナメローゼにいましたもん。魔法少女のバイトを始めて、前世の記憶が戻ったんです」
