
副業は魔法少女ッ!
第5章 きららかな表皮にくるまれた残酷
軽口を装っていても、ほぼ本心だろうなつるに、なずなが困惑の色を示す。事務所でもよく見るやりとりだ。日々の行動、選択の全ての主軸をすぐるに置くなずなに、なつるは納得していない。ゆいかも同じだ。
「私も、なずなちゃんはあの子にもったいないと思う。だからって、生瓜さんがなずなちゃんを持ち帰ったら、ゆいかが妬くわ」
「あたし?!」
それは、明珠なりのなずなへの助け船だった。
「妬くでしょ」
「それは……。明珠は妬かないの?」
「もちろん。なずなちゃんは可愛いし、誰かが独占していい存在じゃないね」
「待って待って、ゆいかちゃん一色さん、貴女達お付き合いしてるよね?なずなちゃんまでご所望なわけ?!」
なつるが慌てる。
ここで冗談だと言えるほど、ゆいかと明珠は、なずなを半端な気持ちですぐるから庇ったことはない。
結局、アルバイト中のすぐるの姿は確認しないで、店を離れた。これからどうしようかと話していると、横断歩道を渡ってきた女が一人、なずなに近づいてきた。
「もしかして、なずなちゃん?」
「えっ……」
不意に授業で教師に当てられた時のように、なずなが挙動不審になった。親しげに声をかけてきた女が誰か、すぐ思い出せなかったようだ。
シンプルなコートを羽織った女は、黒髪をうなじの辺りにまとめていて、化粧も薄い。歳はゆいかに近いか、やや上だ。当然、なずなとは面識がある前提で話す女は、ある程度のヒントを彼女に与えた。
