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副業は魔法少女ッ!

第6章 幸福の血肉



 親友と死に別れた、と告白すれば、大方の人間が見せる反応は決まっている。

 だが栗林は、かかえていたバッグの口を見つめていた。水鏡に答えを見出す占い師を気取った面持ちで、ただ一点に視線を注ぐ。その目が求める答えなど、現れないのに。


「その、人は……」

「殺された」

「ここでも?」

「誰でも良かったんだって。捕まった犯人が言ってたそう」

「…………」


 栗林の顔に、やっと、デリケートな部分に土足で踏み込んだあとの気色が見られた。


「栗林さんは、あの頃か今、どっちが大事?」

「それは、……」

「ご家族もいて、学校で勉強もしてる。それを全て否定出来るほど、思い出したばかりの記憶のことで、貴女は悩むの?」


 刹那、彼女が戦慄した。

 理解は出来る。椿紗とてその時々の家族があって、友人がいて、人生があった。少女にまさる存在がなかったというだけだ。

 表層だけで、他人の人生まで見定められない。

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