
副業は魔法少女ッ!
第6章 幸福の血肉
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会社に残って明珠の仕事を手伝って、ひと段落ついたところで移動先のホテルを探していると、ゆいかのスマートフォンに通知が入った。
ホテルの予約ページを閉じて、LINEを開く。
すると、電話しても大丈夫かというなつるからの一文が目に飛び込んできた。
「明珠」
「聞いてあげて。片付けと予約は、こっちでしておく」
「ありがと」
仕事中も、ゆいかは明珠の一挙一動にうっとりしていた。彼女には美しくない瞬間がない。肩よりやや長めの髪を一つに結んで、柔らかなアイボリーとグレーのロングスカートスタイルの彼女と、今夜はこのまま何事もなく穏やかな時間を楽しみたい。祈る気持ちでなつるに通話の了解を送ると、数秒も置かない内に着信が入った。
「はい、……」
『ゆいかちゃん、遅くにごめんね。なずなちゃんの指輪がすられて──…』
なつるの慌てぶりは、尋常ではなかった。彼女が何故、そこまで恐慌しているか、ゆいかは数秒のちに理解することになる。
なずなが盗難に遭った指輪というのは、彼女が肌身離さずつけている、例の青い石のそれだ。彼女が大切にしているもので、魔法少女の魔力を持ち歩くための媒体でもある。
