テキストサイズ

副業は魔法少女ッ!

第6章 幸福の血肉


* * * * * *


 彼女となずなのいたレストランには、ルシナメローゼの怨念が息を潜めていた。ゆいか達が駆けつけた時、ついに顕在化した。

 魔法少女が力を使えば、第三者は部外者になる。変身したゆいかとなつるが黒い塊を拘束したことで、店員や客達に負の感情の干渉が及ぶ危殆は消えたが、明珠が護符を出した時、彼女の変身は差し止められた。帰宅の時間を気にしたなずなが、彼女にその件を訴えたのだ。

 非常事態でも門限を守ろうとしたなずな。すぐるに怯える彼女の顔色に負けた明珠が、現場を離れることになった。

 指輪を取り戻しても、本物か見分けられるのはなずなだけだ。

 一同、揃って説得した結果である。



 戦況は不利ではなかった。

 静謐な憤怒を呻吟にこめる黒い塊をゆいかが捕らえて、なつるがチェーンを振り下ろした時、その塊は容易く砕けた。粉々になった怨嗟が別個の意思を持って逆転を試みてくるのも、想定内だった。ゆいかは背後に忍ばせておいた木の葉の盾を怨嗟に向けて、短絡的に突進してきたそれらを文字通り包んだ。すかさず枯葉を鋭い刃に変えて、怨嗟をくるんだ木の葉に向かって、横降りの雨のように向かわせた。


 グチャ。……ぐちゃ、ブシュッッ…………


 生肉に釘を打ち込むのを想像する音を、怨嗟達の雄叫びが下敷きにする。じきに弱っていくはずの声に、気味の悪い活気が覗き出した。液体になった黒い塊が木の葉が枯葉の隙間をかき分けて、再び巨大な物体になった。ベルト状に分かれると、それはゆいかの四肢を捕らえた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ