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副業は魔法少女ッ!

第6章 幸福の血肉



 チェーンでは薙ぎ払えない。

 そう判断したのか、なつるは怨嗟から距離をとって、スマートフォンを操作した。


 難儀している。すぐるを納得させたら戻って欲しい。


 なつるが明珠に告げたところで、電波が切れた。

 彼女が外部に連絡をとれたのは、そこがさっきまで圏内だったからだ。途絶えた通話が、怨嗟の影響範囲の拡大を裏づけた。


ゴォオオオオォオオオオ…………


「あゥッ!」

「ゆいかちゃん!」

「ひぃぁっ、くっ……とりゃァッ!!」


 血管をくるんだ肉ごと窄まる痛みに顔を顰めて、ゆいかは、落ち葉を宙に浮かせるべく試みる。

 その時、鬱血するほど手脚に食い込んでいた黒い縄がたゆんだ。解放感に息をついたゆいかの身体が、地面に叩きつけられた。
 

「っ、……っ」


 床に這いつくばったまま、ゆいかは枯れ葉に魔力を送る。二畳ほどのカーテンにして、そっと怨嗟に近寄らせる。今度こそ黒い塊を捕らえられそうなところで、ひゅっ、と触手がスクエアネックの襟の隙間を入り込んできた。


「え……」


パシィィィッ…………


 なつるのチェーンが、ゆいかの肌をぬるっと舐めた黒い腕を叩き落とした。その腕の先が握っていたのは、ウサギのマスコット。


「……あ……」


 黒い触手が抜き取っていったマスコットは、ゆいかにとって、なずなの青い石の指輪と同じだ。魔力が侵食されていく感じがした。

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