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副業は魔法少女ッ!

第6章 幸福の血肉



「東雲さん?」


 ゆいかもなつるも、なずなも驚かなかった。

 椿紗は、なずなの探していた指輪を手に載せていた。もとより、そこに魔力を付与しているのは、彼女だ。在り処を突き止めるくらい容易かったのだろう。


 だが、そうした推測は楽観的だった。


「有り難うございます、東雲さん。返してもらってきて下さったんで──…」



 椿紗に距離を詰めたなずなが、両手を差し出した。


 ごとん。


 なずながその場に崩れ落ちたのは、突然だった。

 倒れたというより、まるで借り物の魂を手放した人形だ。彼女の形をした抜け殻に、椿紗が手のひらを這わすと、ピンク色のロリィタ服の少女は煙になって、青い石に吸い込まれた。



「なずなちゃん……!!」


 なつるがガラスペンを構えた。


 なずなを煙に変えた女。


 元を辿れば、椿紗もルシナメローゼの元住人だ。

 戦意をむき出しにしたなつるの脇をすり抜けて、椿紗が店の出入り口に向かう。

 今の現象は、食事をしている客達には認知出来なかったようだ。そして彼らは、ともすればここにもう一人少女がいたことも忘れている。



「やだ……やだ……」


  
 なずなが消えた。それも目の前で、人としての形状を失くして。

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