
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
明珠の隣にいたい。彼女を失くしたくない。とりたててのめり込めることもなかったゆいかが初めて夢中になれたのは、明珠だった。いくらガーリーファッションや化粧は好きでも、この四日間の精神状態を振り返れば、他人にお節介出来ただけでも奇跡というのに。
「髪もやっていい?」
「えっ」
「可愛い色。こんな髪にとやかく言うなんて、悪いけど、その人、バカなの?」
「あっ、いえ、バカは私で……迷惑かけているのだって、あんなに面倒を見てくれているすぐるくんを、私が困らせてばかりいるから……」
なずなの後方に座り直して、ゆいかは彼女の二つに結った髪をほどいた。
顔も知らない男になど興味がない。世間知らずな初草と戯れる木の芽風を想わせる春色の声に、名前を呼ばせる恩知らず。すぐるの話に相槌を打って得られる利益があるとすれば、その間、なずなの時間に身を置けることくらいだ。彼女に、ゆいかが「話を聞いてくれる親切な人」として印象づく。
「指輪も、すぐるくんから?」
「これですか」
「ゆいかちゃんってピンク好きそうなのに。誕生石かな?」
「いえ、昔、友達から……」
ゆいかは安堵に胸を撫で下ろした。
初対面の大学生が誰を好きでも、まして歩んできた人生など、ゆいかには関係ない。頭の天辺からつま先まで、ほぼ桜色のなずなに意外と似合う、透き通るような青い石。そのリングの贈り主に妬かなければいけない理由も、ゆいかにはない。
