
副業は魔法少女ッ!
第6章 幸福の血肉
魔法少女としての菫子の活動期間は短かった。
しかし人望も厚く心も強かった彼女は、短期間で強大な魔力の媒体になった。そのスピリットジュエリーを手に入れた椿紗と彼女の親友の霊は、なつるが形容した通り、魔術師も同然なのだろう。
「なずなちゃんを元に戻して」
「私が彼女に何かしたとでも?」
「したじゃないですか」
「彼女は魔力そのもの。この姿こそ、今の本当の彼女なの」
椿紗の声には、悪意も後ろ暗さもなかった。しかるべきものを手に入れた、それだけだと言わんばかりの面持ちで、彼女は指輪を自身の指に嵌めた。瘴気がまた色を変えた。
「っ…………」
「連絡ならつかない」
「え……」
「ルシナメローゼと現実世界は、通信出来ない。瓜生さんが固有魔法を使っても、この場所は割り出せない」
ぞっと寒気がした。
ゆいかはスマートフォンをバッグに仕舞って、その持ち手を飾っていたウサギのマスコットに手を伸ばす。
「…………!」
魔力を掴み出せない。
変身はおろか、固有魔法も使えない気がした。
種も仕掛けもない民家にいたはずだ。ゆいかが踏み込んだのは、現実に生きる東雲椿紗という人間の起臥する生活空間で、精神世界などではない。だが、ここはルシナメローゼだ。
