
副業は魔法少女ッ!
第7章 私だけが独りだった
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何通りもの痛苦に喘ぎながら、生まれては滅び、滅びては生まれるだけを繰り返してきた人間は、果たして世界に必要か。
この数ヶ月、ゆいかが封じてきた怨嗟達が訴えていたのと同質の惆悵を並べ立てた椿紗の顔は、これまでの彼女に見られなかったくらい、穏やかだ。
彼女の腕に、無条件の信頼を寄せた様子で自身の腕を絡めているのは、異国の装束をまとった少女。十代後半と思しき少女は、彼女と名前を呼び合うだけで、この世の全ての幸福でも手にした類の表情を見せる。
なつるが夢の中で見たという少女の特徴に一致する。彼女の話と異なる点を挙げれば、目の前の少女には、足がある。
「不要な人間は、いません。東雲さんだって、そうじゃないですか。その人が大事で、また一緒にいたいから、ルシナメローゼのために頑張ろうと思ったんでしょ」
「その通り。私には彼女が必要だった。でも世間は違う。何度生まれ変わっても、彼女は皆に殺された。見捨てられた。私達には平凡な幸せも認められなかった」
「東雲さん達の辛さは、分かります。東雲さんが、前に話してくれたこと……一度だって悲しいのに、何度もお別れするなんて、誰だって耐え難いです。でも、こんなことしなくても、今度こそみんな幸せになれる方法が──…」
「現実の貴女達の苦しみが、私達を生かすのに?!」
「あぅっ……」
ゆいかを締め上げていた桎梏が、力を強めた。
振りほどいても引きちぎっても、見えない腕は、獲物の動作を押さえつける。なずなの指輪を奪い返すのは疎か、椿紗に近付けさえしない。
