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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった



 辺りは、いつの間にか一変していた。

 湿気を含んだ巨石のドームが、負の充満した外気から、ゆいか達を匿っている。洞穴らしき入り口に覗けるのは、澱んだ青空。


「葉桐さんは、ピンクちゃんが好きだったんでしょう」


 少女から離れた椿紗が、ゆいかににじり寄ってきた。

 彼女の顔に、最近まで信頼していた雇用主の面影はない。


「でも、愛しているのは一色さん」

「……それが、何か……」


 椿紗が目配せすると、その先に、複数の影が現れた。

 再生したルシナメローゼは、かつて彼女らの生きた島国とは別物だ。肥大した怨念が可視化したに過ぎないのに、椿紗が誰も招き入れなかったという彼女の自宅に、生気を宿した人間までいる。中には見覚えのある顔もあった。


「栗林さん、橋田さん……っ」


 かつての同僚に呼びかけたゆいかに、椿紗の手が伸びてきた。

 むぎゅ。

 椿紗の指が、ゆいかの乳房を鷲掴みにした。彼女は、見えざる腕が押し出すそれを揉みしだきながら、空いた片手で身頃のボタンを外していく。上体に残るものが下着だけになったゆいかの目先で、椿紗が工作用のナイフを出した。無数の目がゆいか達を傍観する中、キリリと音を立てて、カッターナイフの刃が伸びていく。


「この魔法少女を絶望させましょう」


 ブラカップを引っ張って、ワイヤーごと真っ二つに裂いた椿紗が、後方を見た。

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