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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった


* * * * * *

 ゆいかの消息が絶えた。

 なつるの透視は、なずなを始め、彼女らの居どころを特定出来なくなったという。


 明珠にとって、今日まで八神すぐるという人物は、こうも取り乱すような男ではなかった。彼は、なつるから連絡を受けてレストランに向かった明珠のあとを尾けていた。
 またお前らか。横柄な言葉つきとは相反して、なずなの行方が不明であると知らされた彼は、蒼白な顔で動揺している。


 泣きたいのはこっちだ。何故、ゆいかを一人で現場へ向かわせたのか。


 体面も気にせず目を腫らす男が羨ましくなる。後悔しているのは、明珠も同じだ。
 だがゆいかは、数ヶ月とは言え明珠より魔法少女としてキャリアも長く、何より成人した一個人だ。いくら恋人でも、過保護は時として暴力になる。なずなとすぐるが分かりやすい例だ。
 その結果、壊れた。三十二年という人生の中で、失くすより得たものの方が圧倒的に上回っていた明珠にとって、日常の中に当たり前にいた女が突如、姿を消した状況は、容易く順応出来るものではない。


「東雲さんの家、事務所の裏よね?味気ない庭の一軒家で合ってる?」

「待って、一色さん。危ないです」

「その危ないところへゆいかが行ったの」

「私だってなずなちゃんが心配です。ゆいかちゃんも。でも、二人を見つけられるか分からない。忽然と消えて、魔力だって辿れません。東雲さんの力は未知数ですから」

「……力?」


 はっとした顔で口元を覆ったなつるに、すぐるが怪訝な目を向けた。

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