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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった




 結論から言えば、明珠はなつる達の忠告に従わざるを得なくなった。

 ゆいか達の探索には慎重になれという彼女らの方針に従って、終電に滑り込める内に解散したあと帰路に着いた振りをして、椿紗の自宅のチャイムを鳴らした。窓の明かりはなかった。連絡先を調べて大家を叩き起こすと、事件かも知れないと言って、数枚の紙幣を握らせた。そうして借りた合鍵でようやく侵入したルシナメローゼの責任者の起臥する家は、留守だった。

 そうだ。

 なつる達が、明珠を思いとどまらせたのではない。ゆいかは疎か、椿紗の行方も掴めなかったのだ。

 家族の寝静まった自宅に戻って、家政婦の手料理に手をつける気にもなれず就寝準備を済ませると、ゆいかの家に連絡を入れた。


 …──残業で終電に遅れたので、うちに泊めます。


 非常識な時間にも関わらず、ゆいかの父親は、律儀で友好的だった。彼の対応に余計に胸を痛めながら、そのあとは一睡も出来なかった明珠を、昨日と同じ朝が迎えた。

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