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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった


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 ルシナメローゼの存在感が濃さを強めた空間で、なずなは深く眠っていた。眠りが深いほど、ここでは思考が冴えるらしい。


 八神菫子という少女を思い出したのは、彼女のスピリットジュエリーを、一時的に手放したからだ。魔法少女に無差別の恨みを持つ人間の窃盗が、なずなから、一時的に菫子の干渉を遠ざけた。あの指輪の青い石こそ彼女の形見で、彼女の魂の果てだった。

 なずなは、菫子の魔法にかかっていた。なずなとすぐるを助けて、怨嗟と相打ちになった彼女の最期の望みは、なずなに自分を忘れさせること。そして、すぐるの側にいさせることだった。


 菫子の魔法は執着だ。

 彼女の執着の固有魔法が、最後になずなのスピリットジュエリーにこもったことで、なずなは彼女の望んだままの道を辿った。彼女を忘れて、彼女の弟をひたむきに愛した。


 なずなが指輪を奪われていても魔法少女になれたのは、菫子の魔力の残滓が石を通して身体に浸透していたからだ。
 椿紗やなつるが気付かなかったのは、なずながむやみに狙われないよう、菫子が何かしら細工を施したためと考えられる。すぐるや地元の友人である山川が、彼女の話題を出そうとする度、あらゆる妨害が入っていたのも、偶然ではなかったのである。

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