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副業は魔法少女ッ!

第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世



「私達魔法少女は、スピリットジュエリーもどきが原因の事件を解決出来る。でも、人間同士のトラブルは、業務を離れたところでしか干渉出来ません。さっきの女の子は気になりましたが、後を尾けて、ただの身内内暴力だと判断しました」

「恋人に手を上げるなんて、ろくでもない人間ね。その子の死相は見えないのよね?残念だけど、放っておくしか」

「…………」

「放っておけないところまで、見えちゃったか」

「……はい」


 リンゴ柄のワンピースの女は、なつるが呼び止めたのが原因で、恋人からの折檻を受ける。まるで物語のページをめくるように、なつるにはそれが見えたのだ。


 ここは、魔法少女の派遣事務所だ。相談依頼を客から受けて、その原因が非科学的なものであれば、匹敵する力を用いて解決する。
 喧嘩や暴力、自殺願望は、ある一定の場所に蓄積した負の怨嗟が呼び寄せるものだ。負の怨嗟は意思を持って石に棲みついて、不特定多数の人間達を不幸に導く。

 なつるは自身の戦う相手の目的も知らず魔法少女を始めたが、椿紗曰く、かつて生者だった者達による祟りのようなものらしい。負の怨嗟は魔法少女達によって再び石に封じられて、椿紗の元で浄化される。彼女は、それをスピリットジュエリーもどきと呼んでいる。

 この特殊な職業を扱う個人経営事務所は、まだ人手が不十分だ。なつるは与えられた固定魔法で、適性のある人物を見付けては声をかけている。少女と呼べる年齢であることより、その力を必要としている人物であるかが選考基準だ。


「昨日の美人とも、リンゴちゃんとも。明後日までにまた会えます。今度こそしっかりお話し出来ると思います」

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