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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった



 辛ければ、悲しければ、いつでも連絡をちょうだい。

 あたしなら、もっと大事にするのに。


 すぐるを離れて、自立出来る気がしない。男の力に頼らなければ、人並みの暮らしも出来る気がしない。

 そうしたなずなの臆病を、ゆいかは否定した。なずなが従ってきたものを否定して、なずなだけを肯定した。相談所にでもなるつもりか、と、親身な彼女になずなが冗談を投げかけた時は、真顔で頷いた。すぐると別れさせようとまでしてきて、人生を壊されるかと懸念した。壊そうとしていたのは、なずなの方だったのかも知れない。

 ゆいかを利用するつもりはなかった。それでも、泣きごとをぶつけるために彼女に何度会いに行っても、いつでもなずなを迎えてくれた。なずなが人間の姿を失くして、菫子と一体になっても尚、こんな場所まで追ってきた。


「逃げて……ゆいかさん……私は願いが叶ったの。菫子ちゃんそのものになれたの。ここにいても苦しくないから、私のこと諦めるって、東雲さんに言って……!」


 彼女の痛みが、指輪を通して伝わってくる。

 だのになずなの方からは、彼女に声が届かない。叫んでも、夢の中のうわ言だ。


 なずなを見限れば、ゆいかは解放されるはずだ。彼女からは、ルシナメローゼの養分である負の感情が搾り出せていない。

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