
副業は魔法少女ッ!
第7章 私だけが独りだった
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いまわの際、怨嗟は悲しげな雄叫びを上げた。
まるで現実世界に生きたがっていたとも取れた黒い塊は、あらゆる攻撃を嚥下した末、ある瞬間、何かの拍子で凄まじい光を放出して事切れた。
残ったのは、例のごとく物理的な損傷だ。
外壁は崩れて窓ガラスは割れて、見るに堪えない一軒家は、もし住人が残っていれば、大惨事になっていたろう。
なつるに助けを求めたのは、すぐるだった。標的本人が呪いを自覚したなど聞いたことはなかったが、彼は、両親が揃って仕事に向かう時間も予め知らせていたらしい。家を復旧出来るまでの時間稼ぎも、彼に任せられるだろう。
「本当に終わったの?」
怨嗟は、しぶとかった。攻撃が攻撃にならなかっただけあって、まだ警戒を解けない顔で、なつるが辺りを見回した。彼女の斜め後方に、濁った白い石が転がっていた。
明珠は、石に還ったルシナメローゼの怨念を拾う。
なずなの身につけていた、スピリットジュエリーとは比較にならない。無念や憎しみから生まれた意思を封じた石は、魔法少女の遺した輝きからすれば、見劣りする。だが、今、手のひらに収めた乳白色の重みは、無性に明珠の胸を締めつける。なんてやるせない冷たさだ。
双方一歩も引けなかった交戦が、何を弾みに決着したか。
それは、なつるの透視も読み解けなかった。
不毛な議論を重ねていると、彼女のLINEのアカウントに、依頼主から到着の連絡が入った。
