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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった


 それでも恨まないかも知れない。

 悲しんでも、悲しみが底を尽きたゆいかは、空っぽになるだけ。

 他人の悪意に沈められても、飲み込まれるには、やはりゆいかは愛されすぎた。
 昔は病弱だったのもあって、両親はどれだけ忙しくても幼い娘を寂しがらせまいと努めてくれたし、幼稚園に通っていた頃から、教員や友人に恵まれた。絵に描いたような穏やかな人生。社会に出ても、大切にされる日常は変わらなかった。それまで以上に幸せになった。

 愛しか知らずに生きてきたのに、憎むのは無理難題だ。


「なずなちゃん……」


 何故、こうも放っておけなくなったのか。明珠に向ける想いとは違う、それなのにゆいかにとって、なずなは特別な存在になった。必ず守ると決めた以上、彼女を諦めたくない。



 ゆいかは、身体の奥深くに魔法少女の光を感じた。唇を動かす程度になずなを呼んだだけで、何かが呼応してきた感覚だ。

 スマートフォンの電波も入らないここで、元いた世界で使っていた力は、どこまでゆいかのものになるか。ここでは最低限の魔力が与えられてきただけだ。そうして固有魔法を重ねて使ってきた今、微量ずつ余ってきたそれが、ゆいかを媒体にして蓄積している。それは魔法少女として使い慣れた魔力であって、馴染みのない感触だ。

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