
副業は魔法少女ッ!
第7章 私だけが独りだった
* * * * * * *
…──待って、菫子ちゃん!
なずなが追い縋っても、少女の声は、容赦なく遠ざかっていった。
菫子のスピリットジュエリーに取り込まれてから、こうも意識が冴え渡ったのは初めてだ。彼女の気配が消えたからか。
薄ガラスの向こうを覗く。
菫子の消えた方角を見ると、ゆいかの姿が魔法少女に変わっていた。
死者である菫子と、会話した。
なずなが非科学的なものを疑う種類の人間なら、きっと夢でも見ていたのだと解釈していた。しかしなずなは魔法少女で、ここは現実とは異なる世界だ。思い出すや会いたくて仕方なくなった彼女と再会しても、愛おしさに紐づく感情しか起きなかった。驚かない。むしろ彼女を忘れていた自分自身が、信じられない。
ゆいかに伝えなければいけない。彼女と現実世界に戻って、菫子に聞かされた事実を持ち帰るのだ。
「出して、ゆいかさん!聞こえる?!出して!!!私だよ!!!」
張り巡らされたガラスを砕けば、なずなと菫子の繋がりは終わる。肌身離さず身につけると約束した石が砕ける。それに魔力の媒体だった。変身も出来なくなるかも知れない。
それでも。…………
パリィィィィーーーーーン!!
「…………?!!」
結氷した水面くらい薄いガラスは、星屑になった。
石に覆われた空間にいたゆいかと女が、一斉に、きららかな破壊音のした方向を見る。少し遅れて、椿紗も左手を庇って鋭い目をなずなに向けた。
