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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった



「天方さん……」


 忌々しげに歯軋りした椿紗の背後に、第三者の気配が近付く。蒸せるような負の匂いをかき分けてきた足音、話し声の主達が特定出来ると、なずなから肩の力が抜けた。


「一色さん、なつるさん!」


 あまねく光を味方につけた装束が目も眩むような明珠と、鮮やかな赤と薄紫が目を惹くなつる。彼女らの後方にもう一人、今度はなずなをぞっとさせる人物が続いていた。







シュルッ。


 なずなを狙った突風を、ゆいかの蔦が、向きを変えさせた。
 ゆいかを変身させた魔力は、慣れ親しんでいたのとは性質が違う。しかし咄嗟に出た癖が、従来通り、植物を操れることを実証した。

 椿紗がなずなに放った突風は、頑丈な石の天井に穴を開けた。吹き抜けになった部分から、石が溶け出す。

 
「東雲さん、もうやめよう。東雲さんのされていることは、無意味です。魔法少女のスピリットジュエリーや怨嗟達を封じた石に、ルシナメローゼを再興する力はありません」

「…………?!!」

「東雲さんの親友さんが、それだけ人間を恨んでいるんです。東雲さんに魔法少女を生ませて、破滅させて、特に欲深い人間を消させたかっただけ」

「なずなちゃん……?!」


 椿紗に向き直ったなずなの口調は、明確な根拠に基いている風だった。

 それには、椿紗も目を見開いた。すぐるだけが落ち着いている。

 すぐるが何故、ここにいるのか。理解が追いつかないのはなずなも同じらしく、さっきから、彼女は恋人と目も合わせない。時折、やましい秘密が見つかった子供のような目で、彼を盗み見ている。

 すぐるの方は、なずなのぎこちなさに納得している顔つきのまま、彼女に頷いた。

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