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副業は魔法少女ッ!

第8章 正義の味方のいないご時世



 輪になる四人に目を遣っていたゆいかに、なつるが顔を向けてきた。


「一色さんとゆいかちゃん、時間大丈夫?私はなずなちゃん達を送っていくけど……」


「あっ、わ……」


 そこで、ゆいかは気が付く。嫌な予感に急き立てられて、スマートフォンの画面をつけると、終電はとっくに逃していた。


「ゆいか、ごめん。今日も残業だって、私から連絡するわ……」

「連日で明珠の評判を落とすわけには──…」

「どうしよう、怒られるかな?」


「一色さん!!」


 なつるがやけに焦った様子で、ゆいか達に割って入った。


「私が送ります。なずなちゃんより先に、ゆいかちゃんを送ります。必要があれば毎日でも送迎するので、本当に本当に、ゆいかちゃんに関しては今後何もご心配なさらず……!!」


 その場にいた一同が、目を丸くした。なずなよりゆいかを優先するなつるが意外だったし、ゆいかも彼女にそこまでの恩を着せた覚えはない。


 いや、彼女が気を遣ってくる心当たりなら、一つある。


「っ……」


 寒気と眩暈が押し寄せたのは、その時だ。不吉な何かが身体中を駆け巡っていく感覚の直後、ゆいかは立っていられなくなった。

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