
副業は魔法少女ッ!
第8章 正義の味方のいないご時世
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あれから一年が経った。
なずなは大学を卒業した。すぐるの内定が近辺の数社に決まったため、引き続き、四年間暮らした街に住むことになった。椿紗も再就職が決まった。ルシナメローゼの事務所にいたメンバーが、あれから全員揃ったことはなかったが、個人的に出かけたり、グループLINEで話したり、今でも近況は把握し合っている。
街が、薄紅色の花で装っていた。
四月の第一週目の今日、なずなはすぐると、市内の有名なホテルに来ていた。ロビーに見覚えがあったのは、なずなにとって、ここが初めてではなかったからだ。二年前、ゆいか達と出逢った場所。
あの時、なずなはあんな日々が当たり前に続くものと諦めていた。自分には何もない、何も出来ない。身も心もぼろぼろだったなずなの化粧を直して、泣き顔を輝かせてくれたゆいか。彼女は、あの頃すぐるがくれなかった言葉を、惜しみなくくれた。彼女の愛は明珠にのみ注いでいたが、あの日から、なずなをことあるごとに気にかけて、友情とも愛情ともつかないまごころに包んでくれた。
