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副業は魔法少女ッ!

第8章 正義の味方のいないご時世



「ゆいかさん、大丈夫かな。LINEは返してくれるし、あの副業で、体力は付いたみたいですけど」

「元がひ弱だったからね」

「…………」


 二週間という期限は、先送り出来た。それでも病魔は執念深く、なずなのLINEのトークルームに、たまに明珠から連絡が入る。誰に吐くことも出来ない弱音を、なずなにぶつけるしかないのだ。

 魔力を解放する直前、なつるはルシナメローゼを調べるための散策に出た。彼女があの時、ゆいかを同伴させたのは、この件を伝えるためだった。
 

「一色さんには聞かせたくなかった。ゆいかちゃんが嫌がれば、彼女を尊重しようとも考えた。ルシナメローゼと私達は、もしかすれば共存出来たかも知れないから。あんな残酷な魔法、一色さんに使わせなくて、済んだかも知れないし」

「…………」

「スピリットジュエリーって、作れるんだって」

「え」

「魔法少女じゃなくても、人間って骨になったら、その一部を宝石に変えることが出来るんだって。麗石って言って、石英と合わせて結晶化させる。皆、綺麗な石になれるんだね」

「…………」

「ゆいかちゃん、自分がいなくなった時は……って。親御さんに頼んであるみたいだよ。一色さんに渡して欲しいからって」

「そんな……」

「子供育てる予定はないけど、自分の娘にそういうこと頼まれる親の気持ちって、どんななんだろ」


 なずなはやるせなくなった。左手指に、菫子の重みを思い出す。

 放り出してきた食事会への気がかりや、すぐるを置いきた後ろ暗さも、歪む視界と同じようにぼやけていく。

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