
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
愛おしさより、最近は、息の詰まる思いばかり上回る。場所もわきまえず指を絡めたり腰を抱いたりして歩くような二人組でも、実は悩みの一つや二つあるのか。
ゆいかからすれば、なずなは宝のもち腐れだ。当たり前に生きられることの幸福を、彼女は意識もしていない。
「そんなに悩んでも、別れるつもりないんでしょ。なずなちゃんは、すぐるくん以外の人間を知らない。悩むくらいなら浮気してみれば」
「そんな……」
「なずなちゃん、お洒落で人懐っこいのに、すぐるくんにはもったいないよ。私が恋人だったら、もっと可愛がってる」
おろおろと、言葉に満たない声をこぼしながら、なずながパフェの苺を掬った。生クリームに溺れていた大粒の赤にかぶりつくのを躊躇う顔が、ゆいかのいたずら心をくすぐる。
「アッ……」
なずなの白くあどけない右手ごと取って、ゆいかは彼女のパフェスプーンに唇を寄せた。
かぷ…………
みずみずしいツヤをまとった果実に舌を伸ばして、囓る。洋菓子特有の風味が口内を満たした。まろやかな味と融合した甘酸っぱさは、果肉が潰れていく瞬間、生命力を振り絞る。
「いっ、いいんですかぁ」
「何が」
「かんっ、間接……──に、なるのでは……」
