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副業は魔法少女ッ!

第8章 正義の味方のいないご時世



 なつるも苦しかっただろうと思う。ゆいかに魔法少女を辞めるリスクを伝えてから今日まで、あらゆる黙秘を貫いていた。本人達のいない場面でまで芝居を続けて、時折、透視で様子を窺って。


 なずなも通常の人間に戻った。いや、通常より下回る。
 すぐるだけは味方でいると言ってくれたが、彼を離れれば、明日からの居場所もない。職歴は魔法少女だけで、実家にも帰りにくくなった。


 暗い気持ちに飲まれていったなずなの隣で、なつるが表情を切り替えた。


「さて。そろそろ返事が欲しいかな。楽しみに待つのもありだけど、私としては、なるべく早く八神くんの恋仇は終わりにしたい」

「なつるさんの予知の中で、私は、どんな返事をしていましたか」


 彼女は占い師ではない。ただ、一定数の人間が、悩んだ時はその業界の相談相手を求める感覚で、なずなは彼女の意見が欲しい。


「なずなちゃん自身の、返事が聞きたい」

「…………」

「もう魔法に縛られないで。菫子さんの魔法がなずなちゃんを縛ってきたように、私の魔法で貴女を強制したくない」


 未来は、ちょっとしたことで変わるから。


 そう続けたなつるは、なずなに選択を与えているのか、それ自体が誘導か。

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