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副業は魔法少女ッ!

第8章 正義の味方のいないご時世



「こんな私が魔法少女なんて、おかしかったと思います。友達になってくれたなつるさん達は、本当に優しくて、親切にして下さいました。一生、顔を上げられません。ゆいかさんにもあんなに心配かけておいて、私は何も返せなかった。なつるさんが私を好きと言ってくれても、だから、私はなつるさんのために何か出来ることはなくて──…」

「しなくていいよ」

「…………」

「相手に何か求める時点で、それって愛って呼べるかな」

「…………」

「なずなちゃんが、なずなちゃんを好きになってくれれば。私からのお願いは、それだけ」

「なつるさん……」


 彼女の気持ちを受け入れれば、なずなは変われるかも知れない。きっと本当の愛を知れる。

 なずなは、菫子を慕っていた。彼女の魔法の効果で、すぐるへの好意を錯覚していた。彼を好きにならなければ、もしかすればなずなも、押さえ込まれなかった日々の中にいたかも知れない。
 何せ魔法少女になったばかりの頃のなずなは、運動神経もぱっとせず、気の利いた立ち回りも出来なかった。なつるが褒めてくれたから、あの仕事が向いている、と思い込めた。運動神経は改善出来なかったにしても、数をこなして、一人でも怨嗟を封じられるようにまでなった。


 なつるは睨まれるのを覚悟で、初対面の大人達の間に割って入って、なずなを連れ出してくれた。

 昨日、なずなはどれだけ救われたことか。好きでもない男の庇護下に入って、彼との間に子供を産む。今までもこれから先も、自分で何も出来ない分、あのままでは与えられた居場所を受け入れ続けて、きっと生涯、苦しんだ。

 すぐるは好きだ。しかし、それは菫子の弟として。

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