
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
「ひっ……あ……ああ……」
「なずなちゃん、……」
青ざめて、瞠目した彼女の目から、はらはらと涙がこぼれ出す。
「ご……ごめんなさい……許して……申し訳ありません……何でもします、だから怒らないで……」
「なずなちゃん!……っ、ひぁ」
弾かれるように腰を上げると、ゆいかは天地が反転して見えた。
例の家族の争う声が、どこか遠くの国の言葉に聞こえ出す。怒りか嘆きか、神に祈るにはおどろおどろしい情念を魔物にでも委ねんとする、まるで呪詛だ。
「はぁっ、はぁ……」
まだ一週間も経たないのに、何故、こんな目に遭うのか。人間が肉体なしに生きられないと、誰が決めたのか。
「警察呼ぼう」
「うん、……」
どこからかそうした囁き合いが聞こえた瞬間、ゆいかはにわかに自身の身体が軽くなったのを感じた。
「失礼」
もう相手の顔も確かめられない。少なくともこの声は、最期に聞きたかったものではない。
このまま怨霊になってしまうのか。そうすれば、神がゆいかに初めに救いを促すのは、あの家族の負の情念か。
投げやりに死後を思い描いたゆいかに、それは一向に訪れなかった。諦念が胸に広がるや、むしろ意識が晴れていった。
ゆいかの片手の指の隙間に、女の指が滑り込んでいた。
